友達以上恋人未満…

10/20
276人が本棚に入れています
本棚に追加
/294ページ
私は、日下さんのデスクで、仕事が、終わるまで、ずっと待っていた。 明日、重役会があるから、その準備なんだって…。 「お待たせ、知佳ちゃん。お腹、空いただろう?」 「お腹空いてるのは、日下さんも、一緒じゃないですか。」 「…そうだね。」 日下さんは、人懐っこい笑顔で、笑いかけてくれた。 もう時計は、9時近かった…。 「…魚とかの生もの大丈夫?…俺さ、無性に、寿司が食べたいんだ。」 「…お寿司ですか。」 「向こうにも、日本食とか、和食って、看板上がってる店、一杯あるんだけどさぁ…なんか、微妙に、違うんだよね。 いつも食べてるのとさ。」 そう言って、連れてきてくれたのは、下町のお寿司やさん。 「…源さん。席、二人分、空いてる? まだ、大丈夫かな?」 「おう、真治か。カウンターの隅で、よかったら、空いてるぞ。」 「…知佳ちゃんどうぞ。」 席を引いてくれる。 「真治、珍しいなぁ、女の子連れなんて。」 「…別に、いいだろ。…俺の彼女なんだから。 それよりさぁ、昨日まで、吉水の叔父さんのお伴でさぁ、アメリカ行ってたんだ…源さんの寿司が、食いたくて食いたくて…。」 「そりゃ、力入れて、旨いの握らなきゃな。」 美味しいお寿司を、お腹一杯食べさせてもらった。 「今日はさ、悪かったな。内の鈴村がさ、いやな思いさせちまったみたいで…。 でも、あの鈴村が、タジタジになってたよな…すげえな、あの子。」 「…麻衣のこと?」 「ああ。…あのさ、俺が、周り見えてないって、彼女、言ってたけどさ…どういうこと?」 麻衣達に、教えてもらったことを、日下さんに、話す…。 「ちょっと、待ってくれよ…俺が、モテてる? 有り得ないよ…そんなの。…俺、そんな実感、ないけどなぁ…。 そうなら、とっくに、ハーレム作って、浮かれてるって…。」 「…ハーレムって。それは、飛躍しすぎじゃない?」 「じゃあ、君は?」 「…実は、モテてる実感、私も、ありません。」 「俺達、似た者かなぁ。」 二人、顔を見合わせて、笑ってしまった。
/294ページ

最初のコメントを投稿しよう!