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その日、僕が電車に乗り…空いていた席に座ると、隣りに少し背の小さい女子高生がいた。
普段ならあんまりこんな事は気にしない。女子高生なんかいくらでもいるのだから。
でも…彼女は普通の人とは明らかに違っていた。
「ぽりーん……られたぁ…」
何か一人でぶつぶつと呟いているのだ。
これはひょっとしたら異常者か?
「ゆんゆんゆん……いや、もっと…ゆんゆんゆんゆん…はぅあ✨」
しばらく事の成り行きを見ていると、その女子高生が割と整った顔立ちをして居るという事。
そして、独り言の内容はともかく…声が可愛かったのだ。
「ん~?さっきから何で私を見てるの?ゆんゆん…」
気付かれた!?
「まぁ…いーやぁ……あんま見ないでゆ?恥ずかしいから~」
正面から一度、その顔を見る機会が有ったともいえる。
何というか…朝から良い物を見た。
スタイルも良い。
「君は──「あ、着いたゆ…寒い寒いけど行かなきゃなぁ……」
僕の声はその女子高生に遮られてしまった。
少し胸が痛む…。
「あ」
女子高生が立上がり、開いたドアから出ようとしたが…何故か元居た席に戻って来た。
「おすそわけ、あげゆ✨」
そう言って取り出したのは飴玉の袋。
「…ありがとう」
僕が中から一つ取り出したのを確認すると、その女子高生はドアが閉じる前に急いで走り去ってしまった。
「……不思議な娘だったな…」
僕は彼女から頂いた飴玉を掌に置いて眺めて見る。
藍色の球体が、窓から入る光で淡く輝いていた。
END
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