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こんなに自分のしたい事が分からなかった事はない
いつだって、単純で良かったのに
ひやりとする
この和沙と言う、見えない男
さっきまでへこんでた俺をいとも簡単に別の思考で一杯にさせた
俺が逃げて来たものを、正面から抱き抱えている男
「…真緒は柔道してる、って割に体に厚みがないね」
ベッドに入り、暗闇の中で話をする
腕枕を素直にされて、俺のあご髭をいじって遊びながらの会話
確かにそれは自覚してる。今更肉体改造する気もないが、俺の体はどっちかと言うと空手タイプの筋肉だと、前に他の学校の柔道顧問にも言われた
「実際柔道は四歳から小一までで、後は高校と部活顧問してる今だけだ。格闘技は色々かじったから、体が中途半端なんだな」
「どんな?」
「空手とテコンドー、少林寺。飽き性なのかねぇ。強い相手が減ると面白くなくなる」
「目の前しか見てないからじゃない?それを井の中の蛙って言うんだよ」
「酷ぇ事言う」
「一つの事をやり続けてると、好きでも苦痛だよ。でも、継続は力になる。柔道の教育、本気で頑張れば?才能ある部員、居るでしょ」
「…昔からな、中途半端なんだ俺は。後先を考えない」
「嫌って程思い知ってるよ」
「ふ、はは。…綺麗な顔してキツい」
「あんたに気に入られようとしてないからね」
そう言って笑顔
ちぐはぐな奴だ
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