あなた

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なかなか口を開けなくて黙り込むあたし。 な、なんて言えばいいの? ごめんなさい? それともこんばんは? いや、やっぱり… 「ありがとう…ございました」 お礼、だよね? 「泣いてる子をほっとくわけにはいかねーでしょ」 まだ慣れない距離からの声に、あたしは酔いそうになる。 ずっと追いかけてきた姿。 憧れていたあなたが、今目の前に。 「見すぎ!!」 「へっ?」 や、やだ…見とれちゃってた。 恥ずかしい…!! 泣きはらした目、見られちゃったかな…。 だっちゃんの方をちらっと見る。 「ん?」 「いや…あの…」 「なにー?」 か、かっこいいなんて言えません。 かっこよすぎる…。 あたしはまた黙り込んでしまう。 こんなこと…ほんとにありえる? 「…どっか行く?」 「え…」 あたしが顔を向けると、柔らかい表情でこちらを向くだっちゃんがいた。 そして確信した。 あたし、本気であなたを―――…。 「行きます」
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