太陽と北風

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ふと思った。 今日のはやたら長い。 いつもなら変な挨拶くらいで済むのに。 俺が現実逃避していると、またんく、んく、ぷはぁっと死ぬほど甘いだろうに暑苦しい笑顔でライムちゃんはそれを飲み干した。 しかし若干顔が青い。 きっと罰ゲームか何かなんだろう。 「…………」 俺の予想が当たっているなら、たぶん二階に上がってもこいつらはついて来る。 諦めて兄貴が顔を出している部屋に入った。 今度こそ坊主も追い掛けてこなかった。ていうかあいつ吐きそう。ぅおえっぷ、ってなってる。 便所いけ。 「なあなあ平凡顔の巧くんよ」 寄るなクソ兄貴。 俺が部屋に入るなり、馴れ馴れしく肩にかけてきた手を振り払う。 「あら、お宅の弟さん反抗期かしらっ!?」 「そうなのよ、もう一緒にお風呂にも入ってくれなくって」 「ああ、そりゃ剥けてないからだわよ」 「まぁ、やっぱりそう思う?」 「…………死ね」 奇妙な女言葉で兄貴とチョピン(残念すぎるあだ名だが同情する気にならない)が騒ぐ。 兄貴も言ったように俺は平凡顔だし、兄貴の奇行のせいで酷いときは俺まで後ろ指を指されるんだから恋人なんて生まれてこの方いたこともない。 ようするに、兄貴が悪い。 「ザック、プライムがorzってなってる」 カツラを被った重曹(デブ)が俺の背後を指した。 どう考えても、今それを被るべきはおまえじゃない。 ザックってのは兄貴の呼び名で俺の兄貴はいつのまにか便利な持ち運びツールになっているらしい。いや、知らんけども。 コードネーム(笑)で呼び合う、みたいなこいつらの中学生のノリは理解できない。 重曹とか、どんなセンスだよ。
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