先に行きすぎた先駆者の懺悔

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「……よう、今日は起きてるんだな?調子はどうだ。何かほしいものはあるか?」 日に日に弱っていく道を見舞いに行ける日は限られている。 仕事が終わる時間が遅すぎて面会時間に間に合わない、容態があまりよくない時などは面会謝絶になる時もある。 五日ぶりにまともに会えたと思っても道は寝てばかりだ。 いや、違う。 意識を保てる日が少なくなってきているのだ。 無理に無理を重ね、酷使された体は声なき悲鳴をあげ続け。 終わりにしか向かえない今も尚、休息を求め続けているのだ。 少しでも長らえるために 少しでも、楽になれるように そんな中、いつ以来かわからないくらいに久しく俺は道が起きいる時に面会することを許された。 虚ろで、少し寝ぼけているようなその眼差しを俺に向け、動き辛いのだろうに 首を微かに此方に傾けたその姿に痛ましいとの思いが込みあげ、泣きそうになる。 しかしそれは道が望むことではない。 だからこそ俺は堪え、持ってきた見舞いの花や、道が好んでみていた本など気休めだが少しでも興味を引けそうなものをベッドの近くに置き、俺は道にそんな事を尋ねた。
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