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だから世界を生きていくことはAvalonで生きていくことであるのだ。
3―NINE SISTERS Trap―
家にいても闇市にいても配食所にいてもAvalonのことしか考えていない。
事実、「記憶を思い出せ」など言われたらAvalonの出来事が頭を高速でよぎるだろう。
私を取り巻く物の全てがAvalon、それを証明するものがある。
毎月9日、私は必ず病院に行く。いや、行ってしまう。
あれはもう2年前のことだ。もう2年も経ってしまった。
その頃Avalonを始めた。
最初はどこかのC級のチームに所属していたが、その中で私だけ突出して成長してしまった。
私から振ったのかチームから振られたのかは覚えていないが嫌気が差していたのは覚えている。
1時期単独で行動していたが入ったばかりのクラスAで私は足止めを喰らっていた。
そのときフェアリーチームへの勧誘がきた。
当時の隊長は<ブラン>と呼ばれる男のプレイヤーで私の元恋人。階級は司教。
彼は天才的なゲームメイカーで、自分達相応のレベルの目標より1ランク上の目標を狙うことを可能にする天才中の天才。
それも既に司教の壁とも言えるレベル13を突破した上位聖職者である。
私と同じFAL使い、私は<308>と呼ばれる傭兵に憧れて使用していたが、ブランも同じだと知るとますます意気投合した。
初めて生きた心地がした瞬間だった。
彼は今、目の前で心地よい永遠の眠りについている。病院の廊下で。
戦場クラスA―<廃墟R66>、虐殺の橋。308はそこへアクセスしてロストした。
私もブランもそれ以外の兵士達もこの事実に悲しんだ。私はその悲しみを最強のFAL使いになるというものに昇華させたがブランは違った。彼はこう言った。
―308を追おう―
バカだと思った。R66はAvalonの中でも1番難しい戦場、そもそも個人携行火器などで突破できるような場所ではない。
フェアリーは全員反対したがブランの気迫に押されて行くことにしてしまった。
数少ない、不確かかもしれない情報をしらみつぶしに探し308の事情を知るという<灰色の貴婦人>と呼ばれる狙撃手を見つけた。
彼女を雇い、R66に行った。彼女は何故か楽しそうだった。
アクセスしたところで想像と違うものは何も無かった。銃弾の雨、今までに体験したことのないほどの量の音量。
ブランはいつに無く攻撃的に攻めた。灰色の貴婦人も思っている以上に凄腕で私達は着実に前進した。
しかし、時が経つに連れて仲間も弾薬も気力も減っていった。
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