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ブランに忠を尽くす私はそれでも尚懸命に戦ったが希望すら消えた。それは空に不可思議な歪みが発生したから。
こういう空間がおかしな状態になってしまう現象はAvalonで膨大なデータのやりとりが行われた時に起こるもの。
大きなデータは兵器類がそのほとんどを占めるし、空なんてヘリ以外見たことが無い。
Avalonは効率を1番と考えて設計されている。データ容量の大きい部分からロードされ、次にデータ容量の大きい部分からテクスチャを貼る、ということ。
ひずみの中心がさらにひずみポリゴンを形成、その中心部から平面の3角形の形をした絵が現れポリゴンに行儀よくくっつく。どす黒い余ったポリゴンが流れ出す。
次第にそれは末端までおよび、最後に美しい機体を太陽光に照らし実体化した後、ローターによる空気の衝撃と共に動き出した。
Mi-24ハインド。最悪のヘリが現れてしまった。Avalon最強の航空兵器。
身体のいたるところに装甲を張り巡らされた屈強な面とは別に、異常なほどの素早さ、さらに多量の装備積載能力を誇る。いくらブランでも魔導士が2~3人はいなければ倒せないと思った。
―撤退しよう。このままじゃあ負ける―
私はそう言ったと思う。しかしブランは聞いていたのか無視したのか大きな雄叫びを発し突っ込んでいった。
私も絶叫した。ブランでも負けてしまう。彼らしくない無謀な行動だった。灰色の貴婦人は邪魔な雑魚敵をSVDで撃つのみでブランに手を貸すなどということをしなかった。
Mi-24は重い頭を下げ、対地射撃体勢。建物と建物の間にピッタリ収まるMi-24。
恐怖と風圧に潰されそうになりながらも彼は走った。
クリモフガスタービンエンジンが咆哮を噴き上げ、ローター回転数が上昇。
建物の壁面に残されたわずかなガラスが1斉に割れ、荒過ぎる電子音が鼓膜に残響、気持ち悪い音だった。
彼は走りながらFALを構える。Mi-24は機銃を掃射、ブランが死んだと思った。
しかしMi-24は突然バランスを失い落下、よく見るとキャノピーが消滅していた。
何ということか、ブランは1瞬でMi-24の強固なキャノピーを割り、パイロットを撃ったのだ。
データが重過ぎて耐久パラメータの読み込みに失敗したのか、それとも本当にあの神業をやってのけたのか、それとも他の誰かがやったのか。
真相は判らないが確かにあの時Mi-24は死んでいた。
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