AVALON(c) 白羽の妖精

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 黄昏の空に焼かれた丘、その壮観な光景に感動する暇はない。  丘の奥の方に稲妻のようなエフェクトが何本も発生、そのもとに人がダウンロード。全ての稲妻がこの空間から消えたところで彼らは私たちに向かって走り出した。  あれが今回の目標、ティティスの国の軍隊だ。  この戦場はとても見通しがよく、障害物となりえるのは三個の岩と五本の若く頼りない木だけだった。  私とG3を構えたフェアリー2、M203グレネードランチャーをつけたM16を片手に持つフェアリー5が岩陰に隠れる。フェアリー5が手とM16だけを出してティティス側へ乱射。 『フェアリー、右翼を叩け。一六秒後にグレネードの支援が入る。』  私たちグリトネア国のリーダーが指示を出す。このリーダーが全体の指揮をとるので<キングビショップ>と呼ばれる。 「こちらフェアリーリーダー、了解した。一六秒後よし。」  と復唱しキングビショップに返答、少しすると頭上でグレネードが鳩のように呑気な様子で飛んでいた。  無線をこちらの司教である3にあわせる。5の肩をつかんで敵の右方向へ疾走。  さきほどのグレネードが地につき爆発。電子音混じりの荒い効果音に平面で構成される爆発エフェクトを何層も作る。そのエフェクトは現実世界ではありえないほど長く残留していた。 「5、M203だ。一二時と一〇時。」 『いやっほう!了解!!』  5の太い声がこの地形から消えるのを待たずに二度のグレネード発射音が鳴り響く。  浅い角度で発射したのですぐに爆発した。煙を巻き上げる。そして、せっかちな私も煙が晴れるのを待たずにFALを撃つ。 煙はFALが放った.308NATO弾を避け、美しい円の形を作り、煙によって遮られた視界が開かれる。  今のは試しと視界の確保のため、次が本命。FALのサイトで狙いをつけて二人を撃ち抜く。  一人目はヘッドショットが綺麗に決まった。頭、胴、足の三パーツに分かれて物理法則を無視して空中にとどまる。 二人目は胸部分、これまた二パーツに分かれる。  二人とも薄っぺらい二次元データに変換される。そして弾丸の威力が今頃利いて弾着部が後退、煌く数字に包まれてこの戦場から消去された。 「2、4はその場で待機、3はこっちに来て。右翼の妖精よ!」 『2、サー。』 『3、サー!』 『4、サー。』  右翼の妖精は我がチーム<フェアリー>の隠語で隊形のうちの一つを指す。
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