AVALON(c) 白羽の妖精

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賭けで負けうなだれているバカも何人かいた。 精算用端末の前に行きそこにいる中年女に私のIDカードを渡す。彼女はカードを認証機器に通しキーボードを慣れた手つきで打っていた。 Avalonのシステムは前世紀に流行したパチンコに共通したものがある。それは報酬の現金化だ。これによっていわゆる<パチプロ>のようにAvalon内の収入だけで生活を形成している者がいるほどである。もちろんそれは限られた上位プレイヤーしか成りえないし、そこに到達するまでに消費する現金の量も半端じゃあない。しかし私もその中にいるのである。 目の前のモニターには報酬金額とさっき買ったバレルに消費弾薬代が表示された。 報酬から買い物分を差し引いても今日のお昼ご飯は闇市で少し贅沢できるほど。 カードをそっけなく渡してきた中年女、私もそれをそっけなく右手で受け取りポケットへ入れる。 誰も私に気にかけることなく硬直したかのようにモニターを直視していた。 私も誰に対しても注目せず、汚い待合所から我が家に帰る。 道路はどこもかしこも薄汚れたまさに世紀末を体現した人型のごみが座り込んでいた。 生きることへの希望を捨てている者が大多数であった。 ぐったりしていて蝿が集っている者もいたが、誰もが無視を決め込んでいた。 私にとってはAvalonの住人達と同じ価値しかない、ただの背景の1種。邪魔で、倒すと減点される。 気に留める必要もなく、社会的にも負け犬である。 家の前はまだ少しは良いのだがそれでも1目見れば世紀末だということが判ってしまう。 部屋は6畳1間、この御時勢なので豪邸中の豪邸だ。 計画的で効率よく立てられた結果、旧世代のコインロッカーをそのまま大きくしたかのような建物になってしまった。 しかし住めば都という言葉があるように私にとって…いやAvalonで食べている人々にとっては城を超える程のレベルで捉えられている。 今日は疲れた、と言っても肉体は待合所と家を往復しただけなので筋肉的なものではない。 ここで言う<疲れた>はAvalonで結構活躍してきたことに対する精神的なものである。 だから人口密度があきらかに100%を超えていて,栄養しか考えられていない最低なご飯を出してくる配食所などで空腹を満たしたくなかった。 現金を手に取る。 使われている形跡の無いほこりをかぶった財布の中にしわくちゃにして入れた。 肉体にはまだまだエネルギーが残っているから闇市に行くことは苦ではない。
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