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私、田原芽衣子はエリートだ。紛うことなきエリートだ。
2018年現在最難関就職先といわれる国際警察に就職し、二年間本部のアメリカで刑事を務めた後日本支部に配属された私が今、行っている仕事は。
【大和川のゴミ拾い】という名の汚染物質の除去である。
―1―
「何故エリートである私がこんな仕事を・・・・。もしかして試されているのか、いやそれにしても・・・・」
大和川の河川敷、ごみで埋め尽くされたそこに辛うじて出てきた地面に座り込む全身防水のゴム女。それが私。
エリートである私は慣れない力仕事に疲れ果て、動くことすらままならない私の耳に何処からかやってきた猿の鳴き声が届いた。
「芽衣子!!働けー!こんっの給料泥棒!!」
「うるせー!!IQ80の猿並み野郎が!!」
・・・いけない、エリートの私としたことが大声を上げるなんて。きっと疲れているんだわ・・・。
「誰が猿だ、この眼鏡ブス!!」
「黒縁眼鏡は流行最先端よ!!もてない負け組が!!」
余りの鳴き声の喧しさにまた声を上げてしまったわ・・。
「負け組で悪かったな!さっさと仕事しろ」
ばしゃばしゃと水音を立てて近づいてきたのはサ・・同僚の安川拓海である。
私と同じ防水ゴムスタイルのせいで無駄に整った顔とのアンバランス差が馬鹿みたい、あ、間違えた馬鹿だったわ。
「おい、心の声が駄々漏れだぞ。誰が馬鹿だ。だ!れ!が!」
「うるさいわよ、IQ80、負け組、かす」
「一つ増えてんぞこら!」
ぎゃんぎゃん騒ぐ安川は置いといて私はさっさと昔ながらの魚屋さんよろしくのゴムエプロンを脱いだ。
「おい、何やってんだ。五時までだろ。まだ三時だぞ」
うるさい安川を全無視してゴムエプロンを畳んだ。
「こんな仕事やってられますか。それに取っても取ってもキリがないじゃない。エリートがすることじゃないわ」
ポケットからセルフレーム眼鏡を取り出し、黒縁眼鏡と入れ替える。
やや度の合っていなかったせいで不鮮明だった視界がクリアになる全くクリアでない水面が見えた。
三年前、上流に化学工場が出来てから川の汚れ方はすさまじい。
人体に影響はないらしいが緑色に変色した水は明らかにゴミのせいではないだろうに。
「しかたねぇだろ。部長の命令なんだから」
ゴミを漁るための棒にもたれかかり呆れた様に言う安川。
「わ、私は絶っっっ対あんな子供認めません!!」
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