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「朽ち果てろ!」
八割の殺意と、二割の怨みを込めて手を振り下ろす。
誰だ。ギコルとか言いやがったのは。悔しいが、全くその通りにしか見えない。
手の動きと連動した氷柱は魔王様の頭に向けて降下し、直撃。
………否。
魔王様の動かした腕。放たれた魔法により、掻き消された。
「おはようございます」
本を閉じ、その存在を魔力に還し、一礼。普段、魔王としての威厳は無いが、力がある。それが十三代目魔王、バシル・ アハトアハト。
「詠唱破棄でこの威力とか。お前鬼な。悪魔な」
詠唱破棄してもしなくても全てを無に還すアンタには言われたくない。
しかも六本もビン開けやがって。この酔っ払い。クソオヤジが。
「ちょ、だだ漏れ。部下の心の声が痛いよ。怖いよ」
「ええ。その為に“壁”張ってませんので」
「なにこの子。黒い。黒すぎるよお母さん」
この人は無に還す魔法、《零》だけでなく、他人の心を覗く、《ラミラー》という能力も持っている。
最強にして最低。非常にやっかいな魔王なのだ。
さて、そろそろフィールドを展開しようか。
「いきなり心の壁全開とか。名に考えてるか分からない現代っ子。怖いよママ」
「魔王様、本日の予定ですが十一時より遊牧民、グロニキシアの族長との対談。十三時より軍戦力強化案の作成、提出。十四時より意見箱の確認、対応。終わり次第、民に害なす魔獣の鎮圧となっております」
「鬼畜ですね。わかります」
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