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十七歳の時、ヒトは軍隊を組み、襲撃してきた。
最初は抵抗したが、多勢に無勢。逃げる事を余儀なくされた。
逃げている途中、俺を庇うかの様に魔物達がヒトの足止めをした。
いや、ただ俺が目に入らなかっただけだろう。
俺は走り続けた。森を抜け、川を下り、毒ガスの出る沼を泳ぐ。
そうして逃げ着いたのは、とある城。
噂に聞いていた、魔王城。
考えを持たずに重々しい扉を開け、魔物が横で睨みつけていようが関係なしに突き進んだ。
城の中で最大の扉は、すぐに見つかった。他の扉が発する威圧感より強く、他の扉が発する存在感より強い物を持った扉。
ぎこちない動きで扉を開けると、俺は動けなくなった。
気怠そうに椅子に付いた肘。伸びてボサボサになった髪。顎に生えた無精髭。
だらしない筈の全てが、この人物の強さを語っていた。
「良く来たな」
初めて聴いた声に、身体が震え、喜びを示す。
俺の居場所は、ヒトの中では無かった。
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