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「あら、おはよ」
「おはよう」
食事係のマユと挨拶を交わし、席に付く。食堂と言っても、簡単なキッチンと八人が座れるテーブルが有るだけで、対した大きさは無い。
「魔王様は?」
「バシルならまだ寝てるはずよ」
マユは魔王様の事を、いつも呼び捨てにする。もっとも、魔王様がそれを望んでいるので、何ら問題は無い。
むしろ、問題なのは魔王様と呼んでいる俺だろう。
「そうか」
マユが運んで来た料理を目の前にすると、腹が豪快な音を発て、早く喰わせろと自己主張。
マユはフフッと笑い、自分の朝食を取りにキッチンへ戻る。マユの歩調に合わせて揺れるポニーテールを引っ張って三時間たっぷりと説教をくらったのは、良い思い出だ。
コトリとマユが目の前に自分の朝食を置く。マユの量より俺の量が多いのは、彼女なりの優しさなんだろうか?
「いただきます」
「はい、どうぞ」
ソーセージを口に運ぶと、パリッと音を発て、同時に肉汁が染み出してくる。
トーストには綺麗な焦げ目。ジャムは木苺を用いたもので、甘酸っぱいその味は魔物でさえ、虜にさせる。
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