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五感を楽しませてくれる料理。彼女が魔王城に来ていなければ、魔王城の人間はどうなっていただろうか。
……魔物並の食事か。
マユへ心の中で感謝し、トーストに噛り付く。
そんな時、ふとマユが言葉を零した。
「丁度一年前だったね」
「なにが?」
一先ず、忘れている振りをする。それに大した意味は無いし、思い出したく無い事でもない。
本当に、なんとなく。
「あなたがこの城に来てから。あ、今日で十八歳?」
「あー…。うん。そう」
そう。ヒトの軍隊は、俺の誕生日に俺を襲いに来た。誕生日くらい良い事があるだろうと考えていた俺にとって、それは神からの最悪なプレゼント。
だが、それが無ければ魔王城に来る事は無かっただろう。だから、最高のプレゼントでもある。
「プレゼント、用意してないわ」
「いや、良いよ。別に。覚えてくれてただけで」
俺の発した言葉を聞いているのかいないのか。彼女は頬に手を当て、思考の海にダイブ。
そんな彼女は、今年で二十歳。誰もが振り向く可愛らしい美貌は、この城では意味を成さないでいた。
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