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「ご馳走様」
コップに注がれていた茶を飲み干し、一言。これからまた魔王様の所に行かなければならないと思うと、少し鬱だ。
「うん。お粗末様でした」
思考の海にダイブしていたマユはその言葉で現実に戻り、ニッコリと微笑む。魔王城に居なければ、さぞもてただろうに。
自分の皿をシルクに置き、食堂を後にする。そういえば、マユがこの城に来た理由を一切聞いた事が無い。
どんな理由だろうか、と摸索していると、もう魔王様の部屋に着いていた。
一度の深呼吸。今日は何を言われるのか。討伐、捕獲、採掘、面倒な事が無ければ良いのだが。
そんな期待を込めて、ドアを二度三度ノック。
「魔王様。入りますよ」
木製のドアを押し開くと、ギキィと安物の音が鳴る。
安物、というか、俺やマユと同じ作りの部屋に住んでいるのは、節約家だからか、ただ面倒なだけか。
「……また酒か」
部屋から流れ出る酒の臭い。慣れていない者なら、これだけで気分が悪くなるだろう。実際、俺がそうだった。
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