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石造りの床には昨晩空けられたであろうビンが五本。ラベルを見ると、どれも高い物ばかり。
節約家な訳が無い。節約しているとすれば、それは、酒の為だろう。
ベッドがギシリと音を発てる。その音に反応すると、シャツにパンツ一丁の、何ともだらしない男。
寝相は相変わらず悪く、片足が布団からはみ出している。無造作に…というより、ただ切っていないだけの髪。剃っておらず、伸びた髭。枕の横に置かれている、酒のビン。
これが、人間が怯えている魔王だと思うと、頭が痛くなる。
「魔王様、起きて下さい」
布団ごと身体を揺らすが、起きる気配は無い。いつもの事。
いつもの事だから、起こす為にいつめ使っている手も、勿論ある。
「魔法書召喚」
手をかざした場所、何も無い空中に光が集まり、一冊の本が姿を表す。
これが、俺の魔法。魔法書召喚。
この本は召喚して、第一段階。第二段階は、ページと発現させる魔法の名を語らねばならない。
「第315頁」
風など一切無いにもかかわらず、表紙が開き、自動的にページが捲れ、止まる。
そのページには、今から俺が発現させようとしている魔法名と術式。それに関する概要が事細かく記載されていた。
「《アイスランス》」
魔法書に描かれている術式が光り、魔法が発動する。アイスランスは巨大な氷柱を召喚する魔法で、それは魔王様の頭上に展開された。
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