第一話『異世界』

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もし、スパイなら敵に情報を与える事になる。   リルはそれを黙って観ている。 観ている事しか出来ない。 ギルはリルの直属の上官なのだ。 兄でもあり、上官でもあるギルの決定には逆らえない。 それにリルも不安なのだ。 シュリは赤の他人。 しかも森で倒れていた怪しい人間。 まだ素性も明らかではない。 そんな人間を信用など出来る筈もない。 「貴方を王宮に連れて行く。貴方の瞳には力がある。ただの一般人とは思えない」 ギルが少し諦めた様に、また呆れた様に言った。 その言葉にシュリもリルも驚く。 こんなにあっさり認めるとは思っていなかったから。 「その代わり条件があります…」 ギルは後ろを向き、廊下の方に歩いて行きながら言う。 「いえ、やっぱり良いです」 ギルは言い止まる。 (ここで言えば、彼はもっと警戒するでしょうし…。もっとも言い淀んだ事で既に警戒してるでしょうが)
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