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その目には問いただす、という気は無いのが分かる。本気で心配している様だ。
だが、狩璃はその質問に答えられない。
答えられる筈もない。
狩璃自身がその理由を知りたいのだから。
「分かりません」
また二人の間に静寂が流れる。
その静寂を壊す様に足音が聞こえて来た。
廊下からひょいと入って来たのはギルと同じ碧髪の少女。腰まではあるであろう髪をツインテールにしている。歳は狩璃と同じくらいだろうか。その割にはギルと同じ橙の瞳からはしっかりとした意志が感じられる。
「兄さん、ファルシア国王からの魔法通信ですよ…ってその人起きたんですか?」
「ああ、私が来た時には起きていたよ。国王陛下から?分かった、彼の事少しの間頼むよ」
ギルは部屋から出て行く。
少しの緊張の面持ちとともに出て行く。
(ファルシア…?いや、それ以前に妹はなんて言った…魔法…?ふざけるな、そんな物在るはずがない!いや、でもファルシアって…)
狩璃は必死に考えていた。
そう、狩璃にはファルシアという名前に聞き覚えがあった。
それは自身の小説の中。
それは想像、空想、幻想。
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