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「人とは、愚かだね」
静かな声音が、風に乗って届けられた。
二人が振り返ると、背後にはひとりの青年が立っていた。
闇の中でもその漆黒が見分けられるかのような、青に近い黒髪の青年の肌は白い。
深くフードを被っている為、その表情をうかがい知ることは出来ないが、海の底の色を讃えた瞳だけは悲しげに揺れていた。
「貴方は……?
追っ手のようには見えないけれど」
女性が問うと、青年は首肯し再び口を開いた。
「僕は追っ手ではないよ。
カルベリア帝国皇太子、並びにファンシラー王国第一王女。
君達を追って来た人達は、僕が眠らせておいた」
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