2人が本棚に入れています
本棚に追加
「それでも、この世で結ばれぬなら……」
「死んで結ばれたいって?
人の子の考えることは、やっぱり僕にはよくわからないなぁ。
でも……君達の、命を懸けた結び付きの先に何があるのか、僕も見てみたくなったよ。
だから、手を貸してあげよう」
青年は瞳に優しさを宿すと、細く白い腕を二人に向かってゆっくりと差し出した。
「君達の国は、互いが天に定められたかのような宿敵……。
しかしそれは、人の子の愚かさと愛おしさであり、天意ではないよ。
忘れないで……幸せになってはならないと、天に定められた人の子など、この世にはいないんだ」
そうして、決して結ばれるはずのない家に生まれたカルベリア帝国皇太子とファンシラー王国第一王女は、夜のラウラ海にその姿を消したのだった。
最初のコメントを投稿しよう!