深紅

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「今日も楽しんできたかい?」 笑顔で私を受け入れて、冷たいビールを差し出す 受け取ってからソファーにもたれ掛かった テーブルに車のキーをカシャリと置いて 「ありがとう 素敵だったわ」 そうっと頷く彼に視線を向ける 啓治は高校からの同級生で、大学は違うけれど彼とは気があった 彼は医学部、私は薬学部 彼は医師となり実家の病院に勤めている くしゃっとした少し長い髪にくっきりとした二重の瞳 王子様って本当にいるんだと思わせる容姿 「今日は彼女達に誘われなかったの?」 ハハッと苦笑いを浮かべて 「僕だって休養は必要でしょ 美咲と同じだよ」 普通だったら目の前の啓治に恋を抱くんだろうな 残念ながら甘い感情は持ち合わせていない 今までも恋愛はしてきたけれど、どこか一線をひいた冷めた自分がいた 熱くなれない… 冷たいビールを流し込み 「シャワー借りるわよ」 リビングのドアを開けた
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