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どのくらい1人で息を殺していたんだろう…
クシャッと頭を撫でられ、見上げればマスターが微笑んでくれていた
「恋には色々な形があってね
想い描くようにはみんないかない
だから、切なくて素敵なんだよ」
一度流れ出したら涙が止まらなかった
しばらく優しく撫でられる手に救われた
「さぁ、世界が色づくよ
次は美咲さんの番じゃない…
君は誰を想い描くんだろうね」
そっと背中を押されて夜の街に踏み出した
マンションまでの帰り道、何度も浮かべては黒く塗り潰したアッシュグレイの髪色の…
月がそんな私を嘲笑うように照らして滲んでいる
「美咲は正直でいて…」
啓治の声が心に響いた
出会った時から捕らえられてしまったんだ
美しい獣のような彼に
「紀章…」
初めて呼んだ名前は闇に吸い込まれた
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