ネガイゴト

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「ちょっと、離してよ」 「奈都美が願い事を言ったらな」  奈都美は尚も暴れるが、マスターからすれば力なくした人が壁を叩いていくらいの強さだった。 「私に分かるように話してもらおうか、奈都美」 「そっ、そんな事言われても……話せないわよ」 「声が小さいな」 「だって!! マスターには話せないような事、だもの……」  奈都美がマスターに話せない事とは、つまりはそういう事なのだが。  絶対に無理、と言い続ける奈都美にマスターは何を思ったのか、こう言った。 「……分かった。そこまで断るならば問いただす事は止めよう」 「ホント!? 良かった、助か」 「ただし!! 今日は猫の格好をしてもらおうか」 「えっ、ええっ!? なっ、何でそうなるの!?」  奈都美は青ざめる。マスターが言ったのはコスプレをしろという事。そんな破廉恥な事、とてもではないが奈都美にはする気はなかった。 「そんなの絶対に!! 絶対に嫌よっ!!」 「では猫ではなく、あの猫のモデルになったと言われる織姫の格好を」  マスターは奈都美に七夕伝説の絵を見せた。 「絵見た限りだと、猫よりマシ……ううん、ダメ!!」 「いや決定だ」 「決定、って、ちょっと!?」  マスターは奈都美を抱え、ニッコリと笑った。 「まぁリストや2人にも聞いてみようか、猫と織姫どちらが良いか」 「そんなの相談しないでよー!! 助けてー!!」  その日、奈都美はどうなったのか。それは彼等しか知らないのであった……。
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