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何だかんだと言いながら、俺達は洞窟に入った。
「……そういや、お前には願い事があるっつう話になるよな?」
「そうだよ、それが何だよ?」
「どんな願い事か、と思ってよ」
クレイジーに言われて、俺は少し悩んだ。
願い事は、2つあるからだ。
「俺、どっちにしようかで悩んでるんだよ」
「2つくらいあんのかよ。いやまぁ、1つは分かってるけどな」
クレイジーは少し悲しそうに言った。
奈都美が好き、いや愛していると言うべきかもしれないのだ。俺と、クレイジーは。
だから、分かってしまったかもしれない。
「1つは、奈都美が俺に振り向く事なんだよ」
「だろう、な」
けれど、奈都美が見ている先にはいつもマスターがいた。多分、奈都美はマスターが好きなのかもしれない。
何でだよ、奈都美と一緒にいる時間が多かったのは俺なのに。奈都美は、マスターの方ばかり見ていた。
「……俺の思いはガン無視なのな」
「違う!! 俺は、ただ」
「そうなっちまうんだよ。お前の、俺達の思いはよ。例え奈都美に、どちらか選べって言ってみてもよ、奈都美は苦しいだけだぜ」
クレイジーの言う事は確かだ。仲間として見ていた奈都美に、恋人として見てほしいと2人で言ったら、どうすれば良いのか分からなくて。
どちらも受け入れなくても、どちらかを選んでも。俺達は苦しい事を、奈都美は知っているから。
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