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「はぁ、はぁ、はぁ…」
空は漆黒の布に覆われたように、明かり一つなく、代わりに人工の陽が街を映しだし、昼間とは違う顔を見せていた。
コンクリートの高層ビルに囲まれた繁華街。
会社帰りのサラリーマンやOL、そして若者たちで埋めつくされ賑わっている。
―あれから何十分走り回ってるんだ。
何からか逃げるように、必死で走り回る男が一人。
周りと比べれば、一人だけ別世界へ飛ばされたような感じだろうか。
いつもの街には似合わない、非現実的な行動をとっているのだ。
しかし、全力疾走しているそんな男とすれ違っても、周りの人は気にもしていない。
いや、まるで見えていないのではないかと感じられるほど、無反応だ。
普通なら、人混みで全力疾走しているヤツが居れば、不思議に思い視線を向けてくるはず。
しかし、かれこれ走り続けているが、誰ひとりとしてそんな様子はない。
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