遡る記憶……幸(さち)

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「なんでこうなるの、毎回」 「幸ちゃん、いつもに増して重いよぉ……。」 「今回は両手にバケツがあるもんね……。いっつも片方だけなのに」 罰が当たった……。 幸は両手に持つバケツを少しだけ持ちあげれば、苦笑いを浮かべた。 首根っこを掴まれるようにしながら二階の教室に上がれば、教室の外で二人は立たされていたのだ。 先生の落雷が落ちた柏木幸(カシワギサチ)と楠田道子(クスダミチコ)。 教室の中では授業が進み、それを耳にしながら幸は毒を吐いた。 「鬼」 「なんか言ったか柏木」 「なにも言ってません」(なんでいるかな……。それも毎回間が良すぎる) 背後に立つ先生の気配に、幸は決して後ろを振り向こうとはせず背筋をピンと伸ばしたが、その姿に先生はため息をついた。 「お前らは、いや……。柏木から目を離せば直ぐにこうだ」 「なんで私だけ!?不平等!先生なのにそんなこと言いったああぁぁ!」 「それが嫌なら少しは大人しくすることだな、許可を出した時以外は必要最低限、外に出るな。分かったな」 「……鬼。いったああぁぁ、嫁入り前の娘に酷い……。」 先生に鉄骨を落とされ、幸は一人嘆いた……。 勿論、先生がいなくなってからポツリと呟いた幸だった。
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