遡る記憶……幸(さち)

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幸の声が響いた場所は群馬県のある集落で、長閑な場所に15年前この地に幸は生を受けた。 元気はつらつとした姿が印象的な子で、そのせいか時には先生からもよく叱られていた……。 一方の道子は大人しい性格の女の子で、幸とは同い年の女の子である。 家も近く、幸の良き友達の関係だった。 三つ編みの優しげな赴きを幸に向ける道子は、未だに頭をさする幸を見れば苦笑いを浮かべた。 「幸ちゃん、今度から先生の言いつけは守った方がいいかもね」 「なんで?空ぐらい見たいって思うのは普通な事じゃないの」 「幸ちゃんの気持ちも分かるけど、先生の気持ちも分かるから……。今は戦争の真っ只中だよ、外国の戦闘機は速いってお母さんが言ってた……。私達なんて撃たれたらひとたまりもないよ」 道子は、先生に訊かれてないか教室の中をちらっと見れば幸の言葉を待つように暫く言葉を発そうとはしなかった。
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