旅の章(終章)
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これは、宵妲の一族が使う、 空間移動の際に生じる風。 「今まで行方を掴ませもしなかったくせに、 何をおっしゃいますやら」 凪いだ風の向こう。 淡々とした、抑揚のない声がして、 結は、声の主を知る。 わずかな風の残骸が、艶やかな黒髪を撫でて、 そして去っていく。 しばらく見ない間に、さらに成長したようで、 もはや立派な青年然としている兎が、しかし変わらない無表情で、 目の前に立っていた。
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