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その様子を、兎は傍観しているだけ。
何も告げずに行方を眩ましたのは、約3年前。
それから何の知らせもせずに行方をくらませ続けた。
行方を眩ませる前日は、部屋を盛大に水浸しにし、説教をされた日だ。
それを思い出すだけでも、二人にとって居心地が悪い。
二人して同じような引きつった笑みを狐に向ければ、
それをしばらく見つめた後、狐が盛大にため息を吐き出した。
「凌様なんて放っておいてもどうでもいいんですけどね……」
「おい」
「姫様…、あんまり心配かけないでください」
「……ごめんなさい」
凌のことは完全にスルーするあたり、何年経っても
狐は狐である。
結の頭をぽんぽんと優しく撫でると、まるで怒られた幼子のようにしょぼくれた表情になった結を見下ろして、狐は小さく微笑んだ。
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