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「……それで? 僕に一体、何の用が?」
赤い夕日が目に痛い。
屋上ともなれば尚更だ。
少しだけ瞳を細めて、僕は見つめ返した。
沈みかけた夕日ではなく、僕と対面している人物と。
掛けた言葉に、先程まで俯いていた顔が上がる。
けれど、申し訳なさそうにちらり、と僕を見遣るだけで何を答えるでもない。
そのまま気まずい沈黙が続く。
終わりの見えない状況に、先に痺れを切らしたのは僕の方だった。
「何も用がないのなら、帰るけど?」
「っ……、待って、ください」
やっとのことで絞り出された声音は、やけに気弱なものだった。
本当に目の前にいるこの人物は、男なのかと問い質したくなるほどに。
体つきから見ても、高校時代に何か運動部にでも入っていたのだろうことが見て取れた。
僕より背が高い上に、長身だからきっとそうなのだろう。
そんなことを頭の片隅で考えていると、小さな呟きが聞こえた。
「おれ……、先輩のことが、好きなんです」
途切れ途切れに発した言葉に、僕は何ら表情を変えなかった。
ただ頭の中で反芻するだけ。
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