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……すき、好きだと言った。
同姓に言うのであれば、その意味は容易に理解できる。
けれど、そう決め付けるのは安易過ぎる気がした。
何よりも、彼の態度が判断を鈍らせる。
「それは……性的な意味で?」
端的に訊ねると、彼は俯いたまま小さく頷いた。
心なしか先程よりも赤くなっている。
最初は夕日の色と見間違えそうになったが、そうではなかった。
確かに、彼の頬は遠目で見ても紅潮しているのだ。
「僕は一応男なんだけど」
「わ、わかってます。先輩が男だってことも、こんなこというのもおかしいってことも。でも――」
訊くに、一目惚れなのだそうだ。
僕は今年21になる大学三年、対して相手は今年入学仕立ての一年。
極めて稀ではあるが、この大学は男子校であり、着用の義務はないが制服も用意されている。
だから当然のことながら、ここには男子しかいない。
けれど今、目の当たりにしている状況も少なからず存在するのだ。
男が、男を好きだというのは。
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