赤い夕日

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「初めて先輩を見たとき、綺麗な人だな、ってそう思いました。失礼かもしれませんけど、ほんとに女じゃないのかってそう」 「――だから?」 無感情な声音で相手の言葉を遮った。 今僕はどんな顔をしているのだろうか?  不機嫌そうに眉間に皺を寄せているのかも知れない。 それほど、僕にとってはどうでもいい事柄だった。 「君みたいなのを見ていると、吐き気がする。おかしいって分かってるのならこんなこと、しないでくれるかな? 正直言って、気持ち悪いから」 それだけ言い残すと、踵を返した。 彼がどんな表情をしているのか、僕には分からない。 だけど確実に、今の僕の態度が彼を傷つけたのは確かだ。 鋭い言葉でズタズタに引き裂いてしまった。 けれど、それ以前に僕自身も。 同等に傷ついていることなんて、彼は知り得もしないのだろう。
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