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「さあこども、たべものをもってきてやったぞ。これを食べて暗くならないうちにもう少しかせぐんだ。」
「ぼくはもういやだよ、うちへ帰るよ。」
「うちっていうのはあすこか。あすこはおまえのうちじゃない。おれのてぐす工場だよ。あの家もこの辺の森もみんなおれが買ってあるんだからな。」
ブドリはもうやけになって、だまってその男のよこした蒸しパンをむしゃむしゃたべて、またまりを十ばかり投げました。
その晩ブドリは、昔のじぶんのうち、いまはてぐす工場になっている建物のすみに、小さくなってねむりました。
さっきの男は、三四人の知らない人たちとおそくまで炉ばたで火をたいて、何か飲んだりしゃべったりしていました。次の朝早くから、ブドリは森に出て、きのうのようにはたらきました。
それから一月ばかりたって、森じゅうの栗くりの木に網がかかってしまいますと、てぐす飼いの男は、こんどは粟あわのようなものがいっぱいついた板きれを、どの木にも五六枚ずつつるさせました。そのうちに木は芽を出して森はまっ青さおになりました。すると、木につるした板きれから、たくさんの小さな青じろい虫が糸をつたって列になって枝へはいあがって行きました。
ブドリたちはこんどは毎日薪たきぎとりをさせられました。その薪が、家のまわりに小山のように積み重なり、栗くりの木が青じろいひものかたちの花を枝いちめんにつけるころになりますと、あの板からはいあがって行った虫も、ちょうど栗の花のような色とかたちになりました。そして森じゅうの栗の葉は、まるで形もなくその虫に食い荒らされてしまいました。
それからまもなく、虫は大きな黄いろな繭を、網の目ごとにかけはじめました。
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