クリアライン。

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   私と彼女の間には、何もない。  けど、向こうに見える、  少しごつごつした人たちとの間には、  真っ白な粉で引かれた線がどこまでも引かれていた。  まるで、私達とその人達とを差別するように。  試しに、その白線を越えてみようとしたけれど、  なんだか向こうにいる人たちがすごく怖かったから、  なかなか踏み出すことができなかった。  私と彼女は、よく似ている。  声のトーンも、髪の長さも。身体のふくらみも。    そんな彼女を、  ・・・いつのまにか私は目で追っていた。  気がつけばいつでも。いつまでも。  だけど何度も彼女に触れようとしても、それは難しかった。  彼女と私の間には何も見えないし、ないはずなのに。  その透明な線は私が彼女に触れるのを拒んだ。  私は彼女に触れたくてたまらなくなっていた。  それと同時に、むず痒い何かが背中を這いずり回った。  透明じゃなくて、白ならいいのに。  ハッキリと白線を誰の間にでも引いてくれればいいのに。  そうすれば、彼女に触れられるのに。  その透明な線が、  私と彼女を否定するのなら、無くなってしまえばいい。  ――――いや、  むしろ個々の間に存在する線が無くなればいい。  いくつもの世界で、  必ず引かれているその白線と透明な線を、  消してしまいたい。  そうすれば、彼女に触れられるのに。  ・・・・伝えられるのに。
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