5人が本棚に入れています
本棚に追加
私と彼女の間には、何もない。
けど、向こうに見える、
少しごつごつした人たちとの間には、
真っ白な粉で引かれた線がどこまでも引かれていた。
まるで、私達とその人達とを差別するように。
試しに、その白線を越えてみようとしたけれど、
なんだか向こうにいる人たちがすごく怖かったから、
なかなか踏み出すことができなかった。
私と彼女は、よく似ている。
声のトーンも、髪の長さも。身体のふくらみも。
そんな彼女を、
・・・いつのまにか私は目で追っていた。
気がつけばいつでも。いつまでも。
だけど何度も彼女に触れようとしても、それは難しかった。
彼女と私の間には何も見えないし、ないはずなのに。
その透明な線は私が彼女に触れるのを拒んだ。
私は彼女に触れたくてたまらなくなっていた。
それと同時に、むず痒い何かが背中を這いずり回った。
透明じゃなくて、白ならいいのに。
ハッキリと白線を誰の間にでも引いてくれればいいのに。
そうすれば、彼女に触れられるのに。
その透明な線が、
私と彼女を否定するのなら、無くなってしまえばいい。
――――いや、
むしろ個々の間に存在する線が無くなればいい。
いくつもの世界で、
必ず引かれているその白線と透明な線を、
消してしまいたい。
そうすれば、彼女に触れられるのに。
・・・・伝えられるのに。
最初のコメントを投稿しよう!