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どこにでもある畳貼りの部屋に、俺は立っていた。
これがあの木箱か……。
「この中にアレが…………」
目の前に置かれている小さな桂の木で造られた箱。それは、その大きさにそぐわぬ、異様な雰囲気を周囲を放っていた。
「『聖隷の魂』がここに――――」
ゴクリ、と喉が鳴る。
この箱からは物凄い魔力が伝わってくる。
木箱は厳重に、かつ幾重にも高度な【封印魔法】がかけられ、一つ一つ丁寧に解いていくと百年はかかりそうだ。
この道の専門家、それもトップレベルの専門家じゃないと無理だろう。
しかし、俺はこの封印を解かなければならない。
それは俺のためではない。“彼ら”のためだ。
俺はぐっと唇を引き締めると、一息入れてから手順に従って封印の解除に取りかかる。
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