異常を求めるひと

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それから15分ほどして少しばかり足と腕に疲れを感じてきた私は、アーケードと私が住むぼろアパートの間にある小さな公園に入ることにした。 この公園は"小さな"といっても相当に小さく、おおよそ10m四方の正方形の形をしている。中にある設備はベンチと水のみ場だけの、公園とは表現しにくいお粗末なものだった。周りをコンクリートの雑居ビルに囲まれ、またこの公園に来るには狭い路地を通らなければいけないこともあって、私はこの公園の存在を知ってから一度もここに子供たちが集まって遊ぶ姿を見たことが無い。一見すれば空き地同然であるこの公園が、一応は公園と呼ばれる理由はただひとつであり、それこそが公園の入り口と道を隔てている柵に備え付けられた看板なのだ。 看板の大きさは横2m縦1,5ほどの大きなもので、でかでかと「たのしい!パーク公園!」と書かれている。パークとはもちろん公園のことであり、公園を英語でパークと呼ぶのは、一般教養のある日本人ならば誰しもが心得ているワードだ。そしてこの看板に書かれているこの文字こそが、この公園の名前であることも常識的な日本人ならば誰でもが理解できることである。 私は「パーク公園」にたまにぶらりと来る習慣があり、今回も慣れた様子で所々が黒く変色したベンチに腰を下ろした。足と腕が疲れたから公園に寄った、と前述したが、正確にいうともうひとつの理由がある。それこそが私がこの「パーク公園」に定期的に訪れる要因であり、24時間ニューロンを働かせていないと胸がむかむかする私のささやかな趣味だ。その趣味はというと、説明するならばとても簡単なことで、つまり、諸兄らもお気づきの事だとも思う『「パーク公園」という名前に含まれる矛盾』についてである。
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