家出をきっかけに

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しばらくすると彼女はこっちへと顔を向けた 「ごめんね、変なこと聞いちゃって」 「いや、別にそんなことはない」 「私はこの楓の並木道が大好きなの!」 それは先程から見ていては分かったが、楓が好きなのではなく、“この楓の並木道”が好きという表現に違和感を覚えた 「何か思い入れがあるの?」 「あっ!わかる?」 と彼女は可愛らし笑みを浮かべながら問い返してきた 「ああ、なんとなく」 自分でもちょっと素っ気なかったかなと思ったが、気にせず彼女の答えを待った 「私ね5年前の今日にママが死んじゃったの」 思わず声を出しそうになるくらいビックリした 突然の重い話しということではなく、母親の死んだ日が同じ人とその命日に会うなんて思いもしなかったからだ 「ママはね、この楓の並木道が大好きで病気に入院してても毎日ここに通ってたの」 まるで自分の母親の話しを聞いているように感じた もはやここまでくると同一人物ではないかと疑いたくなってくる でもそれはない、僕は彼女のことを知らないからだ
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