第一話『幻想入り』

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「はぁ…はぁ…はぁ…!!」 『ギャアォォォォーーーーー!!』 「…はぁ、ちくしょう!!…はぁ!何なんだあいつ!!」 俺がさっきから全力疾走しているのは、『あいつ』に追い付かれないため。 もしも追い付かれたら? 多分…いや、考えたくない…。 考えうる、最悪の事態にはなりたくない為、今は『あいつ』から逃げる。 それが、俺の今出来る幾つもの選択肢から選んだ、最良の選択!! そう考えながら走っているうちに、奇妙な事に気がついた。 そういや、さっきから木が沢山あるな…。 …森、なのか? そんな事を走りながら考えていると、後ろから追いかけて来ている狼が叫ぶ。 ヤバい。叫び声が近い。 どうする、どうしたらいい。こんな事は、今まで起こった事はない。 そんな自問自答も虚しく、叫び声がさらに近くなる。 このままでは追い付かれる。やるしかないのか? …いや、やるんだ。じゃなきゃ、こっちがやられる。 走るのを止めて、後ろを振り向く。 地面に落ちていた、先端が尖っている木の棒を選び、拾う、そして構える。 居合いの構え。 目の前には、化け物。あと三歩でこっちを捉える。 三歩。 呼吸を整える。 二歩。 精神を研ぎ澄ませる。 一歩。 全神経を使い、一点を狙う。 化け物は俺を捉え、長い爪を突き刺そうと襲い来る。 爪が刺さる。 …前に寸止めの所でよける。 そして、一点を突く! 化け物は一点を突き刺され、仰け反りながら森の奥に消えていった。 何故ヤマトが勝てたか、その理由は二つ。 一つは防御を捨て、捨て身の構えで挑んだ事。 そして、一番の理由。 化け物がヤマトを捉えていた様に、ヤマトも『目を捉えていた』からだ。
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