序章

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 例えば、平日、閉店時間近い時刻の本屋に行ったとシュミレーションしよう。  そこそこ大きな本屋。本の種類は豊富で月刊誌から週刊誌、ライトノベルから文学作品、漫画からイラスト集、ハードカバーから文庫本、経済書から参考書まで。兎に角、所狭しと並んでいる。  だがしかし、本を読んでいる人は、深夜の為、極僅か。  ――ここで、本当に本が好きな人は、別に何も気にせず、目的の本を見付けに行くのだろう。本に向かって、ときめきを覚える。  私は違う。  まず、私は焦るのだ。読書をしている人が少ないその現状に。  次に、私は尊敬するのだ。人が少ない中で、深夜と言う人が寝るべき時間を削ってまでして、読書と言う行為に及んでいる読書家――挑戦者達を。  また次に、私は見つめるのだ。彼らが一心不乱に読書に励む、その勇姿を。  そして最後に、想像をしつつ、新たな本に手を伸ばすのだ。あの人はどうやって読書をしているのか。最初から読んでいるのか? それとも最後から? 自分の好きな所から? 適当に開いた所から? あの人は読書をした後どう感じるのか。感動した? 悲哀を感じた? 嬉しかった? 面白かった? つまらなかった? 呆れた? 損をした気分? それとも――。  思えば思う程、私の想像力は最大限まで発揮され、私のときめきは最大限まで膨れ上がる。
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