序章

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 ――何故、ここまで自分が《本好き》ではなく《読書好き》である事を主張するのか。  皆々様に勘違いをして欲しくないのだ。中でも特に、心の底から本を愛している人には。  ここではっきり言おう。  本、それは私にとって、嫌悪の対象でしかないのであります。  理由は――本と言う物の“本質”(本だけに)と“人々の尊敬”の比率が合わないから。  先程も述べたが、本とは、文字を集めて写した紙の、只の集まり。もっと淡白に言ってしまえば紙だ。神でもなく、上でもなく、守でもなく、ペラペラな紙。“かみ”と言われるものの中で、最低に価値なき概念。  本当に、本当に本当に、本を愛する人にはとても失礼な発言だと思っている。でも考えてみれば、そう思えるだろう。本は紙である、と。  紙の癖に生意気だ。  火に当てれば燃えて、引っ張れば破れて、水に入れれば溶けて――儚いなんて言わせない。脆い、柔(ヤワ)、豆腐未満。  それなのに人々に大切にされて、何様のつもりなんだ。  常に叩きつけられていてもいいんだぞ。  ――苛々する。  今や人々は、本無しに生きられない状況下に置かれている。本――教科書や雑誌なども、例外ではないのだ。  まるで本が万物の頂点にあるかの様な気がしてならない。  読んでいる人より、冊数が遥かに多い図書館や本屋の日常的な光景は、私にとって嫌悪感を引き起こさせる要因。憎らしい、憎たらしい。  全ての比率が狂ってる。
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