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「世の中にはな、説明のつかない不思議な事が、案外身近に転がってたりすんだよ」
例えば、先の世と窓が繋がったりな。
人伝えに聞いたら疑ってかかるところだが、自分が経験すりゃあ、大概の事はあり得るんじゃねえかって思っちまうぜ。
そんなこと、斎藤の前で言おうものなら、「……不思議……ですか?」と、逆に不思議そうにされるんだろうが。
総司は俺の言葉を聞き、何か思うところがあるのか、考え込んでいる。
こいつは、斎藤や藤翁なんかとつるんでいる事が多いから、摩訶不思議な事は、俺よりも身近だからな。
「どうやって、それが出て来たんですか……?」
不承不承と言った感じで、聞いてくる総司。
疑わしいが、そんな事もあるかもしれない……ってところか?
「さあな。 いつの間にか置いてあった」
これは嘘だ。
俺が、自分の手で取ったんだ。
窓の向こうからな。
「なんでお茶なんですか?」
「供えた団子をうまいから食えと言われてな。 ありがたく頂戴したら、今度は喉が詰まるだろうからってな」
「随分と親しげな、韋駄天様なんですね」
段々と信じ始めたのか?
なんだか、わくわくしたよな顔をし始めたぞ。
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