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「いや、あの、何か勘違いしてない?」
私の声に、その黒い瞳を向けてくる。
時々この目に吸い込まれそうになる。
「湯呑もお菓子も、安物だよ?」
「お前にとっちゃあ安物かもしれねえけどな、俺にとっちゃあ、手も出ねえ代物だ」
いやいやいや。
違うって!
「あのさ、うちの父親は、ただのサラリーマン。 役職だって大したことないしさ。 ただの一般家庭」
「さ、さらりい?」
「んと、商人に使われている人!」
その言葉に驚いたのか、一瞬目を大きく開ける。
「それで、そんな金持ってるのか! よっぽどの豪商なんだな」
「いや、どちらかっていうと中小企業。 いや、だからそんなでかくないって」
怪訝そうな土方の顔。
ああ、こういうところで時代って違うんだなって思うよ。
「うちだって金持ちじゃないよ。 家だってローンで買ったって言ってたし、その為に両親共に働いてるんだし」
「だが、お前の部屋は色んな物が溢れてんじゃねえか。 色とりどりでよ」
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