977人が本棚に入れています
本棚に追加
△△△△△
椿が土産だとくれた菓子。
そこには、普段俺用にと用意してくれる湯呑とは、比べ物にならないくらいの箔がついていた。
わからない文字ではあったが、名前は読める。
伝兵衛ってのはおそらく、その菓子屋の名前だろう。
だが、菓子を包んでいる物は、今まで触ったこともない代物。
つるつるとしていて、少し硬い。
だがまあ、これは何となくわかる。
椿の時代には当たり前にある、材質の物なのだろう。
実際、椿の部屋には、同じ様に、つるつる、すべすべとして、光沢のある物や、色とりどりの物。
そして、頼りなさそうにみえて、丈夫そうな物に溢れている。
だが、当たり前の物でも、この様に部屋に沢山あるということは、やはり椿は金持ちなのだろう。
今日も同じように、例の湯呑に茶を入れて差し出してくる。
まあ、いい機会だ。
一言言っておくのも、いいかもしれねえ。
相手が俺だからいいものの、誰彼なしに同じ事をすりゃあ、いらぬ反感も買うかもしれねえ。
「なあ椿、俺にこんな高い湯呑を使ってくれなくていいんだぜ?」
「……はい?」
.
最初のコメントを投稿しよう!