~ 駆け引きは架け橋 ~

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 △△△△△ 椿が土産だとくれた菓子。 そこには、普段俺用にと用意してくれる湯呑とは、比べ物にならないくらいの箔がついていた。 わからない文字ではあったが、名前は読める。 伝兵衛ってのはおそらく、その菓子屋の名前だろう。 だが、菓子を包んでいる物は、今まで触ったこともない代物。 つるつるとしていて、少し硬い。 だがまあ、これは何となくわかる。 椿の時代には当たり前にある、材質の物なのだろう。 実際、椿の部屋には、同じ様に、つるつる、すべすべとして、光沢のある物や、色とりどりの物。 そして、頼りなさそうにみえて、丈夫そうな物に溢れている。 だが、当たり前の物でも、この様に部屋に沢山あるということは、やはり椿は金持ちなのだろう。 今日も同じように、例の湯呑に茶を入れて差し出してくる。 まあ、いい機会だ。 一言言っておくのも、いいかもしれねえ。 相手が俺だからいいものの、誰彼なしに同じ事をすりゃあ、いらぬ反感も買うかもしれねえ。 「なあ椿、俺にこんな高い湯呑を使ってくれなくていいんだぜ?」 「……はい?」 .
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