977人が本棚に入れています
本棚に追加
「お、お前、まさかと思うが、か、壁に……」
恐る恐る尋ねる俺に、じろりと視線を向け、きっぱりと言い放った。
「そう、割った!」
「何してんだお前ぇええぇっ!」
この娘は、しばしば女らしくない事をするとは思ってはいたが、こればかりは、女らしいとからしくないとか、そういう事ではない。
そんな高直な物を、叩き割るなどと、普通するか?!
呆然とする俺の前に仁王立ちになり、
「高価じゃないって言ったよね! 何回言っても、理解出来ないみたいだから、行動で示してみた!」
「はあぁっ?!」
そして、湯呑を拾い、
「本当は、高かろうと安かろうと、物は大事にしなきゃいけないんだけどね。 いい加減聞き分けないんだもん」
と、仏頂面をする。
……って、俺のせいか?
聞き分けないって……、俺は、年下の餓鬼扱いかよ。
普段は、おっさんって呼ぶくせに。
「何度も言うようだけどね、そっちとこっちじゃ時代が違う。 物の作り方も違えば、材料も違う
同じ材料だって、入手しやすいか、しやすくないかでも価値は変わる。」
「お、おう」
.
最初のコメントを投稿しよう!