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何とか手間取りつつ袋を開けると、何とも言えない芳醇な香りが漂う。
「これは、嗅いだ事の無え香りだな」
「だろうね」
と、いいつつ、椿も己の菓子を簡単に取り出している。
そうか、ああやって開けるものか。
後で、開いた袋を使って、練習してみるか?
「まあ、ともかく食べちゃいな」
「おう」
甘ったるい香りのそれを、そっと口元に近づける。
色合いは、醤油煎餅に似ちゃあいるが、醤油のような塩辛い匂いじゃねえ。
持っている感触は、思ったよりも柔らかく軽い。
干菓子……、とも違った感触だな。
「観察しすぎじゃね?」
「あ、すまねえ。 つい……」
いかんいかん、つい眺めまわしてしまった。
早いこと食わねえと、椿が怖い。
ぱくり
一口齧ってみる。
先ほどの香りが、口の中に広がり鼻を抜けていく。
そして、なんと華やかな甘さである事か……。
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