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髪から覗く、悲しそうな横顔。
見たことある。
忘れるわけない。
僕は寒気がした。
だがそれはすぐ嫌悪に変わる。
母さん……。
母が来ていることに気付いていない親族に、バスに乗るからと行って先に帰ってもらった。
母と話をするためだ。
もう一度母の顔をジッと見ると、頬から涙を流していた。
我慢の限界だった僕は母に近づき、口を開いた。
「貴女が涙を流す資格なんてない」
いきなりでビックリしたんだろう。
母はビクッとしてこちらを振り向いた。
「圭吾…」
母さんの声も眼差しもあの時と変わらない。
笑顔もだ。
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