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ヤイトが側から離れるとそそくさと春樹を部下から遠ざけた。
「なんでこんなところで口に出しちゃうわけ?!」
里桜の怒りも最もだ。
死んだとされる人間が生きていたなどと知られればただでは済まない。
「迂闊だった。奴らが消えて気が緩んだんだ」
バツが悪そうな表情を浮かべ顔色を窺うように里桜を見下ろす。
そんな春樹にちっ。と舌打ちしながら
「やっぱり、ヤイトたちにはさっきの男を追わせるわ。Aの身元調査は猫たちにおねがい。-ーーー腑抜けた顔を晒すようならタサナの元に戻るわよ」
と、暗に外れろと凄んだ。
「いや。大丈夫だ。さっきの男の追跡は俺が指揮をとる」
先程の腑抜けた顔から少しシャキッとした表情に本当に大丈夫か、とも心配になる。
さっきの男を追うのであれば最終的に莉子に辿り着くかもしれないのだ。
「...そう。ならお願いするわ」
「ヤイト、あなたジョリーとノアを連れて春樹に付いて。_ジョリーがいれば追跡には事欠かないでしょう」
廃墟に向かったヤイト達を戻すためにインカムを飛ばした。
「タサナたちに状況確認とアルファ様に報告してから追うわ。また何かわかったら連絡して。追跡が出来たとしても接触する前に必ず」
「あぁ。わかった」
里桜の心配を払拭するように、春樹は笑って応えた。
「大丈夫です!我らが付いてますから。春樹班長が何か無茶をしないよう見張っておきますっ」
自らの上官を心配させまいと、部下として仲間として守ろうといつの間にか戻ってきたヤイトの心強い言葉が聞こえた。
少し目線より高めの位置にあるヤイトのくるくるとした大きな瞳を見つめてその言葉に応える。
「頼んだよ」
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