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「そのような存在?どうゆうこと?」
里桜が首を傾げる。
「うちの創始者は初め5人だった。その5人は全員が全員、能力者。あなたたちのように三重能力者だった。だけど《ある事件》がきっかけで4人と1人に方向性の違い、考え方の格差が生じた。よほど危険分子と見做されたのね。けれど、始末はされなかった。追放された彼は後々何かの組織を作っていたそうよ。ただ、その組織のような集団が今まで長年、表はもちろん裏でさえ認識されていなかったのは何故なのか」
引っ張りだした本を片手にグラグラと揺れる危なっかしい梯子を降りつつタサナは話し始めた。
「これはうちの情報部と諜報部の報告をもとにわたしたち、秘密情報管理課が過去を調べられるだけ調べて現時点で推測したことなんだけど……まあ、まず能力者たちというのは所属関係なしに全世界の人々が必ず政府に届け出を出して登録しなければならないじゃない?今ではもうほとんどすべての能力者が登録された名簿がここにあるわ。もちろんあなたちもわたしも登録されているわ」
そう言ってタサナは引っ張りだした本を指差した。
同じように前もって取り出していたのだろう同じような表紙の、床に積み上げられた四冊の 本も指差した。
「これから死んだ能力者たちの名簿とこの名簿を使って調べるの。現在生きているのか、死んでいるのか。この五冊の本には生きている人物しか記載されないはずよ」
タサナは知ってか知らずはニコリと笑みを浮かべた。
「は?どーゆーこと?つーか、この分厚いの五冊も初めから最後まで捲るっつーのか?」
すでに一冊の太さを見てため息を付いていた春樹は新たに四冊出てきたことに対しさらに顔をうんざりさせた。
「それぐらいわけないでしょ。あの仮面が何者かわかるのなら」
そんな春樹に同情するように肩を叩きながらタサナの元に本を受け取りに行く。
「はぁ…それもそうだな」
意を決したようでいや、それよりも諦めに近いように里桜に賛同すると春樹は里桜が持つ五冊の本から三冊を受けとると手近な白亜の机にドサッと置き、椅子に座った。
手荒く置くせいで春樹の座った椅子同様少し軋んだのは見なかったことにしよう、と里桜はそんな春樹を見て苦笑いをこぼした。
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