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タサナが他の本棚の影から死亡者名簿を 三部持って現れると作業を始めた。 黙々と本のページや名簿を捲る音とメモをとるボールペンをはしらせる音だけが書庫の静かな空間に響く。 明かりは里桜がどこから持ってきたのかランプが1つ増え、白亜の机や資料、里桜たちの顔を暖かなオレンジ色の光が煌々と照らしていた。 「…っ」 あっ、と言いたかったのだろう。 だが、驚きであの字さえも出てこなかった。 ただただ息を呑んだ。 「どうした?」 春樹が里桜に声をかける。 「り…莉子って、、、能力者だった?」 途切れ途切れな里桜の声が春樹の鼓膜を揺らした。 「そんなわけないだろ」 さも当然のように答える。 しかし頭が問いを理解したのだろう。 「…いま、だれだって言った?」 そう、聞き返した。 「莉子、よ。岩崎 莉子」 自分に言い聞かせでもするように繰り返して里桜は言った。 「そんなわけ、ねーだろ…。俺らいつから莉子と一緒にいたと思ってんだよ」 春樹は半ば信じていないように頭を振った。 だが、タサナは逃避を赦さなかった。 「事実よ。その子はあなたたちがここに来る3年前ぐらいかしら。それぐらいのときに能力について聞きに来たわ」 俯いている春樹のランプの光のせいで出来ている影を見つめた。 「あなたたちがここに来たのはいつだったっけ?」 「15歳のときよ」 「じゃあ、彼女は12歳のときね。《どうすれば友達を傷つけずに済みますか?》って聞かれたのを今でも覚えてるわ。彼女、幼い頃、少し内気だったようね。だからか能力には攻撃性が反映されていたの。頭に血が昇ると瞬時に能力を使用する側の頭に切り替えられてしまって、なんて言うのかしら。我を忘れてしまうし、それに能力時の頭は普段の彼女からは想像もできないほどに戦闘狂になる。だけどその状態は彼女が一番理解していたの。自分が傷つけてしまっていることが怖くて、だから来たって。彼女は未成年ながら唯一の能力封印者だったのよね」
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